揖龍宍粟(いりゅうしそう)
生活研究グループ 連絡協議会 会長

今井 ひさ代 さん インタビュー

「生活研究グループ」って?その懐かしくも新しい言葉の響きにひかれ、
2021年に新会長として就任された今井ひさ代さんを訪ねました。

32年前にご家族で大阪から宍粟市に移住され、自然養鶏をご主人とともに営まれる今井さんに、
これからのグループのこと、地域で生きることについて伺いました。

ご主人と営む「いまい農場」(宍粟市千種町岩野辺)

もくじ

  1. 自分たちで考える、農業と暮らし
  2. 任せきりにしない、自分たちでもなんといかしていく
  3. 作る人と食べる人、その距離を縮める。
  4. みんな違って、みんないい
  5. 多世代、意見の違いがあるからこその集まりへ

自分たちで考える、農業と暮らし

- 生活研究グループとは、どんな活動をされているのですか?

もともとは戦後、農村部の生活改善を目的に始まった活動です。

例えば、台所の暗いカマドをやめてガスにしましょうとか、
土間をやめて床をあげましょうとか。

行政が支援をしていて、それが今に続いています。

時代は変わりましたが、
自分たちの力で地域や暮らしをよくしていこうという集まりとして続いています。

当初は女性が中心でしたが、
男女共同参画の流れもあり最近は男性もいます。

会員は約15グループ62名(2021年度)です。
宍粟市内でしたら<斉木わさび加工グループ>さん、<田毎そばグループ>さんも加入されています。
私も以前から専業農家でつくるグループで加入していました。

活動内容は、グループで作っているものをイベントで出品するとか
、おはぎ教室や巻き寿司教室をする「食農教育活動」、
新進農家さんやレストランへの視察を行う「移動研修」、
年1回の「活動発表大会」があります。

生研グループは今年(2021年)創設50周年を迎え、
運営もそれまでの全国組織から地域に移りました。


大阪府など一部の地域では、グループを解散するところもありましたが、
兵庫県はこんな時代だからこそ、農業者もそうでない者も一緒になって
生研グループの農をベースにした取り組みが重要になるのではと、
活動を継続することを判断しました。

第50回西播磨地区生活研究グループ交換大会
若手農業者らが営農形態について発表を行い、お互いの意見が交わし合われました。
今井会長による、地域に根ざした暮らしや生業のお話も紹介されました。
今回の企画では今井会長たちが示す、地域と農業を守っていくために
多様な価値を提示したいという思いが強く現れた内容となりました。

先日の西播大会では、今後の生活研究グループの存続意義や方向性について
3地区(姫路、光都、龍野)で話し合いを行いました。

私たちが共有したことは、農に携わる人が減る中で、
それにともない地域の豊かさを伝える人も減っている危機感であり、
それに対して生研グループができることは、
多様な形で農に携わる人たちを後押しする存在になれたらという想いです。

大会のプログラムでは、規模も業種も異なる若い農業者に来てもらい、
仕事や地域との関わりを話していただいたり、意見交換する場をもうけました。
これまでの大会とはちょっと違った内容でしたが、おかげさまで評判は良かったです。

任せきりにしない、自分たちでもなんとかしていく

- 会長に就任されての思いは?

グループの活動は、行政(宍粟市)が事務局をして、
龍野改良普及センターから人もつけてくれています。年間予算も付いています。

これまでは行政サイドが、
用意した場で自分たちが作っているものを販売したり、
発表して終わりということが多く、
「地域をこうしたい」とか「こうしていこう」
という流れは弱い面がありました。

たとえば農業の衰退や地域の担い手不足についても、
行政にももちろんやっていただかなくてはならないし、
国政が動かないとなんともならないところもあるのですが、
自分たちでもなんとかしていく流れを作って、
次世代に繋げていかなければと思っています。

ご主人の和夫さんと

作る人と食べる人、その距離を縮める

今はブランド志向が強いですよね。
MU○Iとか、そのブランドであれば、
なんでも安心して選んでしまう風潮があると思います。

MU○Iのお茶と、家の角(庭)で採れたお茶があったら、
M○JIの方を選んでしまうような。

生研グループでは、作る人(生産者)と食べる人(消費者)の間をもっと近くして、
現場を知ってもらい、食べる人が「これは大丈夫」と判断できる関係を築いてきたいと思っています。

それができれば若い人も後継者になっていくと思います。
「生産者を大事にしましょう」というのは、現場を知ることでできることだと思っています。

インタビュー風景

みんな違ってみんないい 〜地域と農業のあり方

- 会を通して、地域や農業がどうなっていくのが理想的でしょうか。

ちょっとずつでも、ひとりでも多くの人が、
こうじゃないかと思うことができたり、
遠慮せずに意見が言える雰囲気づくりが大切ではないかと思います。


「どうでもいいと思っていた畑を、耕してみたくなりました」


みたいな人が出てくるようなことが大切だと思います。

違った意見を出してもいい、
必ずしも強い者に同調せずでも認められる、
そんな雰囲気ができることが、地域も農業も元気になる上で大切な気がしています。


専業、兼業、農的な暮らし、
どれも地域に必要な農のあり方だと思います。

多様な農の形が存在してこそ、
地域が豊かになれるのではないでしょうか。

- 若い農業者に思うことは何ですか?

それぞれ頑張っておられるので、
もっと横のつながりを持つようにできないかと思います。


やり方や規模が違うでしょうが、
尊重しあいながら繋がっていくことが大事ではないかと思います。

田舎で暮らしていくことや、グループで何か活動していくときには、
お互いを認め合う、受け入れ合うというのが必要になると思います。


たとえやり方が違っていても、
その中で、共通認識として農業・地域を大事にしようというベースが一緒であれば、


「あの人は、ああいうことやってる人なんや〜、ふーん。」

で共存しあえると思います。


手広くやっている人も、
私みたいに小規模でやっている人も、どっちも同等。

みんな違ってみんないいとなれば、
農業もそして地域も発展していくのではないかと思っています。

食やいのちの大切さを体験する場づくりも
積極的に行なっている今井さんご夫婦。

多世代、意見の違いがあるからこその集まりへ

年齢幅が広いのが生研グループの魅力です。

それぞれにできる役割があります。
年配の人たちの持つ、農に根ざした技術は本当に魅力的。

なんであんなにおはぎをチャチャッと作れるんだろうと思う。
自分のところで取れた小豆ともち米で作る。なんとすごいことかと思います。

若い人はSNSを活用したりしてつながっていきましょうとか。
好きなようにやったらいいと思います。

ただ農業を大事にする、地域を大事するということを忘れないで、
ここを若い人が住みたいと思えるようにしていって欲しいです。


私たちにできることがあればいって欲しい。
役に立ちたいと思っています。

2021年9月18日 千種町岩野辺

―お話を終えて

当たり前に見ているキラキラした美しい田畑の風景は、
今ある農や暮らしの営みがあってこそと、改めて感じました。

また経営規模の大小、有機・慣行などの手法それぞれに果たしている役割があり、
認めていく必要があること、多様な農や地域のあり方を共存させていくことが、
農地を守り、ひいては地域を守るというお話が印象的でした。

人は「これが正しい、正しくない」と決めがちです。
その正義が本当に正しいか、他者を交えることで自分が気付かされるという経験は
少なからずあります。

それによって社会全体のバランスを取っていくことが、
より良い未来を築いていける。そんなワクワクを感じました。

また今回は載せられませんでしたが、
今井さんご家族の移住ストーリーや、自然養鶏に取り組まれているお話も
ぜひ多くの皆さんに聞いていただきたいです。

時代を先読みするような生き方をされてこられた
今井さんたちご家族の実践は、地域に根ざして生きていこうとする人にとって
ヒントがたくさん詰まっています。

詳しくは「いまい農場」。

Data

揖龍宍粟生活研究グループ

TEL 0791-63-5173(たつの農業改良普及センター)

いまい農場

兵庫県宍粟市千種町岩野辺1065(MAP
TEL0790-76-2618
http://imaifarm.jp